GRANVALLEY

目指すべきデータドリブン経営の指南書
「データドリブン経営の不都合な真実」

データドリブン経営の不都合な真実バナー

データドリブン経営の「本質」を明らかにする書籍が登場

昨今、DX の進展とともに企業のデータ活用が急務とされるなか、システムを導入しても効果的な活用に至らず、その恩恵にあずかれていないケースが散見されている。これらの多くは「システム導入ありき」の考えで始まり、そもそものビジョンがないがしろにされていることが原因であると考えられる。本来、データドリブン経営は企業変革であり、人や組織、ITシステム、資金などリソースを総合的に投下しないと実現はできない。
データドリブン経営のあるべき姿、その本質を探るべく、著者が過去に手がけた管理会計システムや経営管理システムの案件を考察し、「真のデータドリブン経営の方法論」とは何か。
日本企業が目指すべきデータドリブン経営の指南書を世に出したグランバレイ株式会社の鍜治川修に話を聞いた。

鍛治川
鍜治川 修 プロフィール

グランバレイ株式会社 経営企画部 BI戦略教導グループ
シニアマネージャー

ERP/BIコンサルタントとして、25年の経験を持つ。大手コンサルティングファームにて、ERP 導入や会計関連の業務コンサルティングに従事。その後、BI ベンダーを経て、2012年にグランバレイに入社。数多くの BI 製品の導入や DX 関連のプロジェクトを主導。現在は、大手企業向けに BI/DWH 導入の構想策定や要件定義の支援を実施するとともに、データ活用を指南する「BI 戦略教導」の一環として、各種導入方法論の策定やその普及活動に力を注いでいる。

「データを用いて経営課題を解決する」
これが本質である

ーーー「データドリブン経営」この定義を教えてください。

鍜治川 我々が考えるデータドリブン経営は、シンプルに「データを用いて経営課題を解決すること」であり、これがゴールであるべきと考えています。案件の中で「データドリブン経営=システムを導入すること」を目的にプロジェクト化されることがありますが、システム導入自体は手段であって目的にはなりえません。経営課題が解決できないのであれば、その DX 導入、その分析基盤構築は、データドリブン経営ではないと考えます。

世の中にデータドリブン経営をテーマとする書物はたくさんあります。しかし「経営課題を解決すること」をきちんと明示したものは極めて少ないのが現状です。例えば、ある書籍では、データドリブン経営とは「システムを導入し、何らかのデータを収集して、BI ツールを活用してデータ分析をする」としか述べていなかったりします。繰り返しますが、データドリブン経営の本質は「データを用いて経営課題を解決すること」。シンプルにそれだけ。これをはき違えては「だめ」です。

「目的と手段とをはき違えている」
それが今の現状

ーーー 企業におけるデータドリブン経営の現状をお話ししてください。

鍜治川 おそらく読者の皆様もご存じの通り、データドリブン経営ないしは DX と呼ばれる領域は、私が知る限りそのほとんどが成功していない、または事実上失敗に近い状態が続いています。
では、なぜこのような失敗をするのか?多くは、データウェアハウスや BI ツール等のシステム導入が目的になり、導入すれば以上終わりとなることが原因であると私は推察します。
それに加え「導入後それをどう活用するのか」または「どう経営課題を解決していくのか」など、社内で言及されていない実情を鑑みても、やはり目的と手段とをはき違えている以上、失敗するのは当たり前です。

同様に DX 市場を見渡してみても、エンドユーザーも、導入を支援する SIer やベンダーも、導入ありきである印象をうけています。すべてが必ずしもそうであるとは言いませんが、残念ながらそのような事例が山ほど多いのが、現状ではないでしょうか。

真実を、本来あるべき姿を
正しくお伝えしたい

ーーー なぜデータドリブン経営をテーマにした書籍を出されたのですか?

鍜治川 私としては、「真の経営管理領域で必要なデータ分析とはなにか?」との問いに、真実を、本来あるべき姿を、正しくまとめて世に伝え広めていきたいとの想いを起点として、今回、書籍としてまとめました。
あえて理由をあげるのであれば、次の二つと言えます。

一つ目の理由は「『データドリブン経営の誤解』を正したい」ことです。
データドリブン経営の業務領域は「経営管理」領域にあたります。
データドリブン経営について解説する記事もたくさん出ており、書籍も販売されています。多くの場合、まずはデータウェアハウスや BI ツールなどのシステム導入を勧めて、そしてデータを収集して分析しなさい。以上終わり。と結論づけています。読者からすると「So What? (だから何?)」です。私はそのような書籍を目の当たりにして、本来あるべき経営管理領域におけるデータ分析手法を体系的にまとめた書籍がどこにも存在しないことに気がつきました。

また、「データサイエンティストを育成しましょう」と唱えている記事も多く見受けられます。私の経験から、経営管理領域においてデータサイエンティストが活躍する場所はほとんどないと思っています。データサイエンティストが活躍できる領域は、企業全体の分析ニーズから見るとほんの数パーセントです。ある特殊な業務領域において統計解析等の分析が必要とされるのは事実ですが、多くの業務では必要ないのが現状ではないでしょうか。誤解を恐れずに言うと、経営管理で必要な数式とは「売上-経費=利益」の四則演算のみが基本となります。経営管理の分析手法は、この式に対して、どういった種類、どういった切り口で分析をしてゆくのかなど、バリエーションを増やしていくことになります。例えば実績データなのか予算データなのか、連結データなのか、単体データなのか。どういった粒度、例えば製品別なのか得意先別なのかなどです。これをみていただくと、難解な統計解析の計算式はどこにも出てこないのがわかります。

二つ目は「ベンダー・SIer の思惑」です。
ベンダーや SIer も営利企業ですから、売上を上げなければなりません。そのためソフトウエアの販売やシステムを導入しさえすればこの目的が達成されるため、これらが最優先事項になりがちです。言い換えれば、本当に顧客の成功を支援しているわけではなくて、あくまでも売上目標を達成するための手段として顧客への支援を行っているのが実情ではないでしょうか。また、顧客側もそのベンダーや SIer のセールストークにのせられて、費用を出し、丸投げでプロジェクトを進める訳です。
このように、導入する側はこれらの事実を事前に理解しておくべきです。

DX は容易に実現できない。
読者には「正しく悩んでいただきたい」

ーーー この書籍を通じて読者に伝えたかったことは?

鍜治川 本書の読者には「正しく悩んでいただきたい」
こと経営管理領域のデータ分析、ないしは本質的な DX の領域というのはとてつもなく難易度が高いものであると理解しています。だからこそ、容易に実現できるものではありません。

今まで話してきた通り、世の中にはその高い難易度をごまかして誤った情報を流したり、また正しく理解している人が少ないがゆえに、ミスリードするような情報が世の中に溢れています。例えば「たったこれだけで DX は成功します」のような安易な宣伝トークなどご覧になったことはあるでしょう。
そのような誤った情報もしかり、ベンダー・SIer の思惑など、顧客が考えているものとは違う方向への誘導にのせられないように、「難しいものを正しく捉えて、正しく取り組んでいきましょう」というのが私の想いであり、「正しく悩んでいただきたい」の真意となります。

その意味では、この書籍のなかで解決手法についてあまり語っておりません。あくまでも、どう悩めばよいかの悩み方の指南書になってます。もちろんある程度の解決手法や、これまでの事例や成功パターンが存在するのも事実であり、そちらは今、執筆中の続編にて提示していく予定ですが、それでも、それはどこまでいっても第三者の立場としての言及にしかなりえません。

データ分析の仕組み作りとして我々ができるのは、箱を用意し、箱にデータという魂の入れ方を指南するまでです。その箱にデータを入れる、ないしはそれを利用して分析をする主体者はすべてお客様です。その意味では、我々は絶対に主体者になりえません。だからこそ、読者の皆さまが悩みながらも課題解決の道筋を考える必要があります。もちろん、我々もお手伝いはできますが、回答を出すのはあくまでもお客様です。

理想は「ファクトに基づいた経営管理」

ーーー 理想的なデータドリブン経営についてどうお考えですか

鍜治川 理想的なデータドリブン経営とは「ファクトに基づいた経営管理を行うこと」です。経営者は長年の経験と勘で経営判断なり経営の意思決定をし、その意思決定に基づいて経営を実行し、そして経営責任を負っています。この「経験と勘」は、重大な責務を遂行して行くためにはとてつもなく重要なファクターであり、経営者自身による過去の成功体験によって醸成されている大切な知識とも言えます。

しかしながら、時代や顧客ニーズは常に流動的に変化するため、過去の成功体験が通じないケースも出てくるでしょう。そのような状況下で経験と勘だけに頼っていては危うい経営判断になりかねません。そのような判断をしないためにも、自身の経験と勘が本当に正しいのかという疑う視点と、その経験と勘が正しいことであるという裏付けるものとして、データを活用するべきです。経験と勘にデータを組み合わせて正確な経営判断をする。それが私が考える理想的なデータドリブン経営だと考えています。

自社のデータ活用度を知ることは大事

ーーー 真のデータドリブン経営を加速させるために自社で知っておくべきことは何でしょうか

鍜治川 我々は、自社内のデータ活用度合いの現状を知ることが大事であると考えております。さらに、最新事例や他社と比較・分析して必要十分なレベルに達しているかなど客観的に自社の状態を可視化することも大切です。しかし、このような事をコンアルティングファームやSIerなどに依頼すると時間とコストがかかることが懸念され、多くの企業では実現できていないのが現状です。私どもは、このようなニーズにお答えするため、自社のデータ活用度を可視化する無料のオンラインサービス「データ活用度診断」を開発しました。まずは、このツールを利用して、自社のデータ活用度が必要十分なレベルに達しているかなどを客観的に可視化をしてみましょう。その結果から、データ活用における次なる打ち手を決めていくことがデータドリブン経営のスタートとなります。

データドリブン経営の正しいあり方、
進め方を、皆様へ伝えて行く

ーーー グランバレイについてご紹介ください

鍜治川 弊社は、SAP 製品という経営管理基盤をもとに、データウェアハウスを利用した情報基盤と、データ活用基盤の導入支援を行っています。今日、日本の大手企業を見渡してみると、多くが基幹システムに SAP 社の ERP が採用されており、ほぼデファクトスタンダードといえるでしょう。それ故に、弊社は事実上、日本の大手企業のそのほとんどの基幹システムによる経営管理・データ活用を支援している企業といえます。それがグランバレイの一番の強みです。我々はこの領域においてさまざまなノウハウを蓄積しており、他社には真似できない領域であると自負しています。

ーーー 最後に、新たに設立された BI 戦略教導グループの現状の活動と未来についてお話しください

鍜治川 グランバレイも先ほど述べた SIer であり一営利企業ですので、どうしても売上を重視していく必要があります。私も以前はコンサルティング部隊のトップとしてその責任を負っていました。それ故、売上を上げることを優先し、お客様にとって本当に良いご提案することが二の次になってしまうことがたびたびあり、グランバレイが掲げる「お客様に喜ばれること」を必ずしもできなかったことに対しての反省が私の中にありました。
その反省から、弊社の売上を上げるコンサルティング部隊と切り離し、真のお客様のために寄り添ったデータドリブン経営を追求していく部署として BI 戦略教導グループを立ち上げました。データドリブン経営の正しいあり方、進め方を、皆さまへ伝えて行くこと(教導する)をミッションとして、書籍の出版であったり、経営管理領域のデータ分析の方法論開発などさまざまな活動を行っています。

まだ歴史が浅い部署ということもあり、これらができる人材が限られるが故に少数精鋭でおこなっています。教導できる人材を育成し、より多くのお客様に真のデータドリブン経営の提示、支援することができるような体制を今、整えつつあります。また、BI 戦略教導グループは、製品カットではなく顧客に寄り添う業務領域カットの専門家であるべきだと考えていますので、そのような人材も育成していきます。

書籍紹介

書籍紹介
データドリブン経営の不都合な真実

著者:グランバレイ株式会社/鍜治川 修
発行;東洋経済新報社
 
SAP 導入企業のデータ活用基盤構築を永年専門に行っているコンサルティング企業「グランバレイ」が、データドリブン経営のあるべきについて語る。昨今、DX の進展とともに企業のデータ活用が急務とされるなか、システムを導入しても効果的な活用に至らず、その恩恵にあずかれていないケースがほとんどである。これらの多くは「システム導入ありき」の考えで始まり、そもそものビジョンがないがしろにされていることが原因であると考えられる。本来、データドリブン経営は企業変革であり、人や組織、IT システム、資金などリソースを総合的に投下しないと実現できないものである。企業が目指すべきデータドリブン経営とはいかなるものか。その本質を探るべく、過去に手がけた管理会計システムや経営管理システムの案件を考察し「真のデータドリブン経営の方法論」を提示する1冊。
 
目次:
第1章 「データドリブン経営」の現状を問う
第2章 「データ分析と活用」のボトルネックを探る
第3章 「データ分析と活用」の本質論(データ編)
第4章 「データ分析と活用」の本質論(組織・人材編)
第5章 「データ分析と活用」の本質論(ツール編)
 
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