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事例: データ分析を活かす新たなレース戦略

グランバレイでは様々な業種、規模のお客様に対し、コンサルティングとサービスを提供しています。代表的なプロジェクト事例をご紹介します。

「レースで勝つためにはデータ分析力が必要不可欠。自分たちのチームはどこが優れていてどこが劣っているのか、客観的なデータがレース戦略にとって大変重要です」
Audi Team Hitotsuyama 代表 一ツ山亮次氏

ますます重要度が増すモータースポーツでのデータ分析

一ツ山亮次氏Audi Team Hitotsuyamaは、Hitotsuyama RacingとAudi Japanがパートナーシップを組み、2014年シーズンより SUPER GTシリーズ GT300クラスに参戦するレーシングチームです。一貫して外国製レーシングカーでの参戦にこだわる31年の歴史を持つ名門プライベート・レーシングチームです。
ビジネスにおいてリアルタイムでデータを取得・可視化することが当たり前になった昨今、コンマ数秒を争うカーレースの世界でも同様だと、Audi Team Hitotsuyamaの代表を務める一ツ山亮次氏は言います。

「レースを始めた頃は、ストップウォッチ片手に計測をしていたと聞いています。ところがIT技術が進歩したおかげで、今ではサーキット1周ごとに区間タイムが自動計測でき、車載データロガーから様々な車両データも取得することができるようになりました。しかしながら、せっかく取得したこれらのデータですが、レース戦略において上手く活用できていませんでした。車やタイヤの性能が進化するのと同様に、私たち人間もデータ分析を最大限に活用し進化させなければいけない、そうしなければ現代のモータースポーツでは勝つことができない、と強く感じていました」

一ツ山氏は、そのような課題からAudi Team Hitotsuyamaの分析パートナーとしてデータ活用を得意とするITコンサルティング企業、グランバレイ株式会社(以下、グランバレイ)に協力を求め、2017年より両社でレースに関わるあらゆるデータの集積、分析、可視化に着手しました。

データを素早くわかりやすく可視化し、レース分析につなげる

移動する計測対象や遠隔での計測対象に対して用いられるデータ取得方法にテレメトリーがあり、モータースポーツ分野でも活用されています。しかしながら、国内レースに目を向けると、規定でテレメトリーが禁止されています。そのため、グランバレイはテレメントリーが使えない状況下でも、レース戦略に役立つ情報をできるだけ速く取得し可視化することを目指します。

「今回のプロジェクトでは、リアルタイムのデータが取得できない状況下でも、レース分析に役立つ情報をできるだけ素早く取得し可視化することが重要なテーマでした。レース中に車載データロガーから分析できるもの、レース直後に振り返り、次のレースへ向けた検討材料にしていただくもの、何をどう見せればわかりやすく、役立つ分析になるのか、チーム関係者から意見や要望をお聞きしながら、誰にでもわかりやすく直感的に操作しやすいプログラムを目指し開発しました」

社内レースアナリティクスチーム・リーダーであり、開発者の一人であるグランバレイ営業企画部 / プロジェクト営業グループ マネージャー、河村翔太は語りました。

このようにリアルタイムに近い状態で素早くデータを可視化し、誰にでも見やすくレポートを提供する、という観点から、グランバレイはチームが求めるレース分析のためにQlik製品を選択します。

Qlik Senseで見やすく比較しやすくなったラップタイムデータ

「今回、モータースポーツのレース分析は弊社にとって初めての挑戦でした。まず最初に手がけたのは、レース終了後の振り返りのためにラップタイムのダッシュボードを作成することでした」と河村は語ります。

「レース後に全チーム車両のラップタイムデータが主催者から提供されますが、CSV形式なので、そのままでは直感的に把握できるようなデータにはなりません。これを当社で集約・加工しクラウド上でQlik Senseでわかりやすくダッシュボード化して、チーム関係者に閲覧できるようにしました。グラフ化することで、各チームのレース状況が可視化でき、その結果、ピットインに時間がかかったとか、後半タイムが落ちたなど、一目で状況が把握できるようになりました」

新たに開発されたラップタイム分析システムにより、今までレースエンジニアがCSV形式のラップタイムデータをもとにExcelのマクロ機能を使いながらデータ作成していた作業が不要となり、さらに過去5年間のデータをDB化することで「見たい時にすぐにデータが取り出せ、サーキットごとで過去と比較することが容易になった」と河村と評価します。

レース分析に使われたBIツール「Qlik Sense」とは

車載データロガーのデータをQlik Senseで情報共有

中野佑亮

テレメトリーが規定により実施できないSUPER GTでは、車両に搭載されているデータロガーのデータが車両特性を知るうえで最も重要となります。そのため、ピットインごとに車載データロガーのメモリカードを迅速に抜き取り、そのデータをすぐに解析し、その結果を基に車両セッティングに反映する。この一連の流れが勝利への重要なポイントとも言えます。グランバレイはこのポイントにもシステム化を進めました。

車両ロガーのデータ分析を担当するグランバレイ システムコンサルティング部 東日本グループ マネージャー、中野佑亮はこう語ります。

「車の挙動を把握できるデータはレースエンジニアが最も確認したいものの一つです。データロガーメーカーが提供する解析ソフトで確認することもできますが、どちらかというとレーシングドライバー向けの情報が多く、レースエンジニア向けではありません。そのため、私たちはレースエンジニアの要望をくみ取りながら車両データの可視化をQlik Senseで進めています」

Qlik Senseは複数のデータソースの関連づけができ、GUIに優れ、安全な環境下でのデータ共有が可能なため、チームメンバー誰もが使いやすく将来性のあるもの、という視点で選定しました。

中野とともに開発にあたるグランバレイ システムコンサルティング部 西日本グループ アソシエイト、内田拓巳はQlik Senseを「直感的に使いやすいBIツール」だと評価します。

「Qlik Senseは変数の設定などが直感的にでき、ダッシュボード作成時のレイアウトもしやすかったですね。項目の並びを工夫し、プルダウンメニューで項目を選択すると様々な角度からデータ分析ができるようになりました」

走行中のタイヤ状況、そして他車との関係性を注視

走行中のタイヤ状況一ツ山氏は、レースデータで注視したいものが2つあると言います。

「1つはタイヤに関する情報です。車両情報はデータロガーから取得することができますが、タイヤに関してそうはいきません。走行する車の性能はエンジンのパワーやブレーキなど様々なものに左右されますが、しかし最終的に車が路面と接地するのは4本のタイヤだけです。その情報を知るのが勝つためのカギだと考えています。そして、もう1つが他車との関係性です。前を走る車、後から追ってきている車の状況がわかれば、よりポイントを絞ったレース戦略ができるようになります」

Audi Team Hitotsuyamaは、現在は練習走行時に、タイヤの表面温度とG(車体の前後左右にかかる重力加速度)のデータを計測しており、河村は次のように言います。

「私たちはデータロガーの中で、タイヤ温度とGである重力加速度の関係を重視しています。タイヤ温度は路面の摩擦で上がり、風や気温で冷やされ上下しますが、レース用のタイヤは適切な温度でないと本来のパフォーマンスが発揮できません。加速、ブレーキ、ステアリングを切った時に発生するGが高ければ、タイヤは高いパフォーマンスを発揮しているといえます。これら2つのデータをクロス分析することで、高いパフォーマンスを発揮できる(=Gが大きい)温度レンジの傾向を掴むことができます」

こうした傾向をチームへ共有することで、決勝レースに活かされています。

データアナリティクスを進化させ、勝てるチームづくりに貢献する

グランバレイが提供するレースアナリティクスは、着実に戦略に役立っていると一ツ山氏は評価します。

「レース後に分析されたタイヤに関するデータは、次のレースに向けたタイヤ選びに大いに役立っています。今回使ったタイヤは表面温度が上がりすぎていた、じゃ、次は少し硬めのタイヤにしてみようとか、データ分析をもとにしたタイヤ選び、レース戦略がチーム内に着実に根付いてきました」

データ活用を進めた Audi Team Hitotsuyama は、2020年6月に開催された SUPER GT第6戦鈴鹿、2021年11月のSUPER GT第7戦もてぎで見事優勝を飾るなど、入賞圏内を狙えるチームへと進化を遂げています。

一ツ山氏は「いかにいいタイムで長時間走れるかが勝負なので、他車に先んじてしっかりしたデータ分析を今後も進めていきます」と力を込めて語ります。

そして、河村は今後の展開にさらなる挑戦を口にします。

「現在は、取得したデータを分析し可視化することに主眼をおいていますが、今後はグランバレイが得意とする予測、推測の機能やAIによる自動分析などをレースアナリティクスに取り入れていけたらと思っています。未来をシミュレーションできるようになれば、チームのレース戦略に大いに役立つと考えています」

Audi Team Hitotsuyama

顧客名:Audi Team Hitotsuyama
業界:自動車関連サービス業
所在地:静岡県
製品:Qlik Sense
Homepage: http://hitotsuyamaracing.net/

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※本事例は、2022年2月時点の情報です。
※本事例は、クリックテック・ジャパン株式会社と共同で制作されました。