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AIエージェント開発・運用における可観測性

公開日 2026年8月14日    最終更新日 2026年8月21日

人間の業務を代替する存在として期待されてきた『AIエージェント』は、PoC(概念実証)を経て、エンタープライズの本番環境で本格的に活用する企業が増えてきました。
現在では単発のタスクだけでなく、複雑な業務であってもAIエージェントが人間に代わって遂行できるようになっています。

一方で、AIに任せるタスクが複雑になるほど、AIエージェントが何を考え、どのような順序でツールを使い、どのように最終回答へ至ったのかが見えにくくなることがあります。

本番環境での運用においては、通常のソフトウェア開発と同様に、ガバナンス、コンプライアンス、監査対応に加えて、システムの出力情報を収集し、状態を把握・可視化するための可観測性(Observability)が不可欠です。

本稿では、弊社における開発事例をもとに、AIエージェントの挙動を観測・分析した結果得られた知見について紹介します。

可観測性の重要性

AIエージェントは、表面的には「ユーザーが質問し、AIが一度で回答した」ように見えても、その内部では複数の判断やツール実行が行われています。
こうした処理は、従来のコードベースのシステムとは異なり、実行のたびに挙動が変化する点が大きな特徴です。

そのため、AIエージェントの品質や信頼性を担保するには、内部の処理状態をリアルタイムに把握・追跡できる「可観測性」の仕組みが不可欠です。

可観測性が必要とされる観点は、関わる役割によって異なります。
開発者であれば、次のような問いに答えられる必要があります。

・ 回答までに遅延(レイテンシ)は発生していないか
・ 誤回答やハルシネーションは起きていないか
・ どの順番で、どのツールが選択・実行されたのか

一方、運用者にとっては、より事業運営に直結した観点が重要です。

・ 各エージェントの運用コストはどの程度か
・ 通常は問題なく動作するAIエージェントが、失敗した際に何が起きたのか

可観測性は、ビジネス価値のあるAIエージェントを実現するための中核基盤です。
後付けで整備するのではなく、開発初日から評価指標として組み込むべきものです。

AIエージェントの挙動を確認する

ここでは、実際に弊社で確認したAIエージェント挙動の例を紹介します。
弊社はフレームワークにMicrosoft Agent Framework SDK、可視化にAspireを使用して開発を行っていたのですが、分析してみると、同じエージェントでも、実行によって挙動が異なっていることがわかりました。

ツール実行の流れが整理されているパターン

ツール実行の流れが整理されているパターン

比較的きれいに動作していたAIエージェントでは、処理の流れが大きく 3 ステップに整理されていました。

1. 1回目の LLM 呼び出し:
LLM が、「どのツールをどこで使うべきか」 実行計画を生成する

2. ツール実行:
1 の計画に従って、必要なツールを実行する

3. 2回目の LLM 呼び出し:
ツール実行結果を LLM に渡し、最終的な回答を生成する

このパターンでは、
LLM が計画を立てる → ツールを実行する → 結果を見て仕上げる
という流れが明確です。

ツールを逐次呼び出してしまうパターン

一方で、あまり望ましくないパターンも見られました。それは、ツールを1つ呼び出すたびに毎回 LLM に戻ってしまう構成です。

ツールを逐次呼び出してしまうパターン

このパターンでは、以下のような流れになります。

1. LLMが1つ目のツール利用を判断する
2. ツールを1回実行する
3. その結果を踏まえて再度 LLM を呼ぶ
4. LLM が次のツール利用を判断する
5. またツールを実行する
6. さらに LLM を呼ぶ

つまり、ツールのたびに LLM 呼び出しが挟まる状態です。

挙動を比較して得られた示唆

同じタスク・同じ結果を出力するように見えるAIエージェントでも、内部を観測してみると、複数回にわたる非効率なLLM呼び出しによって、レイテンシやコストが増加してしまっている挙動を確認することができました。

ここから、以下のような打ち手を検討することが可能です。

・ ツールの使用方法をシステムプロンプトやスキルに明記する
・ 一度の実行でタスクが完了するよう、ツール設計を見直す

このように可観測性とは、単なるログ収集にとどまらず、エージェント設計を評価・改善していくための重要な手がかりとなるのです。

おわりに

AIエージェントの品質は、内部でどのように動いているかを把握できるかどうかで大きく変わります。計画性、ツールの使い分け、やり取りの無駄、回答までの一貫性を捉えるには、可観測性が欠かせません。

可観測性があれば、改善点を事実ベースで特定できるだけでなく、本番運用においても、問題発生時の追跡や原因特定、振る舞いの説明がしやすくなります。システムが正しく動いたかだけでなく、AIエージェントが現実世界とどう対話し、どのような判断をしたのかを把握できることが、継続的な改善につながります。

AIエージェントは作って終わりではなく、観測・理解・改善を繰り返しながら、信頼できる仕組みに育てていくものです。可観測性は、そうした継続的な改善を支える基盤となります。

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