インダストリー4.0は「デジタル化」と「自動化」で製造業のビジネスプロセスに変化をもたらしました。次なる産業革命「インダストリー5.0」は、「人間中心」「レジリエンス」「持続可能性」を柱に掲げています。SAP社は、この新たなパラダイムに対してどのようなビジョンとソリューションを提供しているのでしょうか。
本記事では、インダストリー5.0とは何か、またSAP社がどのようなソリューションを提供しているかをまとめました。
インダストリー4.0のおさらい
インダストリー4.0は、2011年にドイツ政府が提唱した「第四次産業革命」を指す産業政策です。IoT、AI、ビッグデータ、クラウドなどのデジタル技術を活用し、製造業のデジタル化を推進。生産性向上や新たな価値創造を目指す取り組みです。
インダストリー4.0は以下の9つの柱で構成されています。
・付加製造
・拡張現実
・自律型ロボット
・ビッグデータとアナリティクス
・クラウド接続
・サイバーセキュリティ
・水平および垂直のシステム統合
・モノのインターネット (IoT)
・シミュレーションとデジタルツイン
生産設備がインターネットでつながり、リアルタイムのデータ共有・分析により、生産性向上、コスト削減、品質改善、顧客ニーズへの柔軟な対応を実現します。ドイツ発のこの概念は、製造業のデジタル変革を推進し、国際競争力の強化を図る重要な潮流となっています。
日本では、経済産業省が2017年に「Connected Industries」を発表。インダストリー4.0を基盤に、製造業だけでなく社会全体のデジタル化を推し進めています。
インダストリー4.0の課題とインダストリー5.0への移行
インダストリー4.0で、企業は効率化と自動化を追求してきました。その結果、次の課題が浮上してきました。
・人間的要素の欠如
過度な自動化により、仕事の「意味」や「創造性」が損なわれ、従業員のウェルビーイングが軽視される懸念が生じた
・レジリエンス(回復力)の不足
グローバルサプライチェーンの複雑化により、災害やパンデミック時に脆弱性が露呈し、迅速な対応が困難となる
・持続可能性への配慮不足
企業の効率優先の姿勢が、環境負荷低減や資源の持続可能性への意識を薄れさせた
これらの課題を克服するため、インダストリー5.0が提唱されました。インダストリー5.0は、人間中心で、変化に強く、地球に優しい産業を目指す新たなパラダイムとして、欧州委員会が2021年に公式に提唱した概念です。現在、学術界や産業界でも議論が進んでいます。
インダストリー5.0の3つの柱とSAPの戦略
インダストリー5.0は、技術革新を超え、人間と地球に優しい産業の未来を追求します。SAPは、長年の経験と先進技術を融合し、企業が次の3つの柱を実現できるよう支援しています。
・人間中心(Human-centric)
・レジリエンス(回復力)
・持続可能性(サステナビリティ)
人間中心(Human-centric)の製造業を支えるSAP
インダストリー5.0の「人間中心」とは、テクノロジーが人間の能力を拡張し、創造的で価値ある仕事に集中できる環境を創ることです。SAPのソリューションにより魅力的で働きがいのある職場を実現し、従業員の満足度や愛着心を高めます。
・コラボレーティブロボット(コボット)との連携強化
SAP Warehouse RoboticsとSAP Extended Warehouse Management (EWM) により、コボットと人間の作業をシームレスに同期。生産性を高めつつ、従業員を単純作業から解放し、高度な業務に専念できる環境を提供します。
・従業員のスキル向上とエンゲージメント
SAP社のソリューションを使うことで、リアルタイムデータへのアクセスを容易にし、迅速かつ的確な意思決定を支援します。直感的なUIやJoule等のAIサポートにより、複雑な操作の負担を軽減し、従業員のスキル発揮と満足度向上を実現します。
・顧客体験のパーソナライズ
SAP社は顧客ニーズを深く分析し、個別化された製品やサービスを効率的に提供しています。データ分析と生産計画を通じて、顧客中心のものづくりを強化します。
レジリエンス(回復力)の高いサプライチェーンを構築
貿易摩擦やパンデミック、気候変動など、予期せぬ事態への対応力は、これからの企業経営に欠かせません。つねに現代のサプライチェーンは、予測不能なリスクに直面しています。SAPのソリューションは、データ活用やリスク管理、セキュリティ強化を通じて、変化に強い企業体質づくりを後押しします。
・リアルタイムの可視化と予測分析
SAP Integrated Business Planning (IBP) は、サプライチェーン全体をリアルタイムで可視化。AIを活用した需要予測やリスク分析で、サプライヤーの問題や自然災害などのリスクを早期検知し、迅速な対策を可能にします。
・柔軟な生産計画
SAP Digital Manufacturingは、突発的な事態にも生産計画を迅速に調整。代替ルートを確保し、ダウンタイムを最小限に抑え、顧客への供給を維持します。
・サプライヤー連携の強化
SAP Business Network for Logistics や SAP Ariba は、サプライヤーとの情報共有を促進。強固なパートナーシップを築き、非常時の協調対応を円滑化します。
持続可能性(Sustainability)を実現するSAPの取り組み
今やサステナブルな取り組みは、企業にとって当然の責任であり、社会からも強く求められています。特に資源やエネルギーを多く使う製造業では、その傾向が顕著です。インダストリー5.0では、環境への配慮と経済的成長の両立が期待できます。SAPのソリューションは、企業のサステナビリティ目標達成を強力に後押しします。
・環境フットプリントの可視化
SAP Sustainability Control Tower や SAP Product Footprint Management は、製品ライフサイクル全体のカーボンフットプリントを測定・追跡。削減目標の設定と進捗管理をサポートします。
・循環型経済への貢献
SAPのソリューションによりエコデザインを支援し、リサイクルや再利用を考慮した製品設計を促進することで、生産プロセスでの廃棄物削減やエネルギー効率向上が期待できます。
・サステナブルなサプライチェーン
SAPのソリューションでサプライヤーのサステナビリティ評価や原材料のトレーサビリティを確保します。それにより環境的・社会的に責任ある調達を推進し、サプライチェーン全体での協業を強化します。
・規制遵守の支援
各国ごとの環境規制や報告要件への対応をサポートし、法令遵守を確実にします。
まとめ:SAPと共に未来の製造業を築く
SAP社は、インダストリー5.0の「人間中心」「レジリエンス」「持続可能性」を実現する先進的なソリューションを提供します。さらにSAP S/4HANAを基盤に、クラウド技術、AI、IoT、アナリティクスを統合し、企業がこれらの価値をビジネスに取り入れることで、ステークホルダーへのアカウンタビリティ(説明責任)を高めます。
インダストリー5.0は、効率追求だけでなく、社会貢献と従業員の幸福を両立させる挑戦です。
インダストリー5.0の実現は、持続可能で人間中心の製造業へと進化し、強固な経営基盤を築く、未来への成功への鍵となります。
SAP社のインダストリー5.0の取り組みについては SAP公式サイト(外部サイト) をご覧ください。
※ SAP 及び SAP ロゴ、SAP BusinesObjects、SAP HANA、その他の SAP 製品は、ドイツ及びその他の国における SAP AG の商標または登録商標です。
※ その他の会社名、製品名は各社の登録商標または商標です。
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