近年、企業のデータ活用は競争力を高める鍵となっています。SAP社は、このデータ活用を強力に支援する2つのソリューション、SAP Business Data CloudとSAP Analytics Cloudを提供しています。しかし、両者は異なる目的と機能を持つため、経営者が最適な選択をするにはその違いを理解することが不可欠です。
本記事では、SAP Business Data CloudとSAP Analytics Cloudの違いを、経営者向けに分かりやすく解説します。
概要と目的
SAP Business Data Cloud:データ統合の基盤
SAP Business Data Cloudは、企業内のさまざまなデータ(基幹システム、CRM、SaaSアプリなど)を一元的に統合・管理するクラウドプラットフォームです。信頼性の高いデータ基盤を構築し、データに基づく意思決定を支援します。
主な機能とメリット
・データ統合:散在するデータを集約し、形式や意味を統一。部門間のデータサイロを解消し、全体最適の分析を可能に
・データ品質の向上:データのクレンジングや標準化で、誤った情報によるリスクを低減
・ガバナンスとセキュリティ:アクセス権限管理や監査機能で、セキュリティとコンプライアンスを確保
・リアルタイムアクセス:最新データに即座にアクセス可能で、迅速な状況把握をサポート
経営者への価値
データの一元化により、正確な情報を基にした戦略的な意思決定ができ、同時に業務効率化やコスト削減を実現が可能となります。
SAP Analytics Cloud:分析と洞察のツール
SAP Analytics Cloudは、統合されたデータを活用し、ビジネスインサイトを得るための分析プラットフォームです。データ可視化、ビジネスインテリジェンス(BI)、予測分析、計画立案を支援し、企業の成長を加速します。
主な機能とメリット
・多様な分析:ダッシュボード、レポート、統計分析、機械学習による予測分析を提供
・使いやすいインターフェース:専門知識がなくても、ビジネスユーザーがデータを簡単に可視化・分析可能
・リアルタイムな洞察:最新データに基づく分析で、市場変化や機会を迅速に把握
・計画との連携:予算策定やシナリオ分析で、戦略的な意思決定を支援
経営者への価値
データを分かりやすい形で提供することで、市場や顧客ニーズの把握、計画の精度向上をサポートし、競争優位性を強化します。
主な違い
以下の表で、両ソリューションの違いを比較します。
項目 | SAP Business Data Cloud | SAP Analytics Cloud |
---|---|---|
焦点 | データ統合とAI主導の業務最適化 | データの可視化、分析、計画立案 |
データ統合 | SAPおよび非SAPデータを大規模に統合。データファブリックやナレッジグラフで意味を保持 | 統合機能はあるが、分析向けのデータ接続が主。基盤構築は別ツール(例:SAP Datasphere)に依存 |
AI活用 | Databricks連携や生成AI(Joule)で予測や業務自動化を強化 | 予測分析やスマートインサイトを提供。AIは分析支援に特化 |
提供機能 | Insight Apps(業務特化アプリ)、リアルタイム分析、データプロダクト化 | ダッシュボード、BIレポート、財務計画、コラボレーション機能 |
対象ユーザー | 経営者、データ管理者、業務部門(財務、人事など) | 経営者、分析担当者、財務・計画チーム |
利用例 | サプライチェーンの在庫最適化、AIによるキャッシュフロー予測 | 売上トレンドの可視化、予算計画のシミュレーション |
経営者視点での違い
SAP Business Data Cloud
価値:社内のデータサイロを解消し、すべてのデータを一元化。AIで業務効率化や将来予測を実現。
例:AIが「どの商品が売れるか」を予測し、生産計画を自動調整。
経営への影響:コスト削減、迅速な意思決定、競争力強化
適した企業:データが分散しており、AIでビジネスを変革したい企業
SAP Analytics Cloud
価値:データを分かりやすいグラフやレポートに変換し、経営やチームの計画を支援
例:売上データをダッシュボードで確認し、次期予算を計画。
経営への影響:現状把握と計画の精度向上
適した企業:データ分析や可視化を強化したい企業
両者の関係性:相乗効果で価値を最大化
SAP Business Data CloudとSAP Analytics Cloudは、単独でも強力ですが、連携することで最大の効果を発揮します。
SAP Business Data Cloudで構築された信頼性の高いデータ基盤の上に、SAP Analytics Cloudの高度な分析機能を活用することで、企業はより深い洞察を得て、より効果的な意思決定を行うことが可能になります。
例えるならば、SAP Business Data Cloudは「良質な食材が集まるキッチン」、SAP Analytics Cloudは「その食材を調理し、美味しい料理を提供するシェフ」のような関係です。質の高い食材(データ)があってこそ、シェフ(分析ツール)は最高の料理(洞察)を生み出すことができるのです。
なお、SAP Analytics Cloudのユーザーに対して、SAP社は、SAP Business Data Cloudへのスムーズな移行オプションが提供される予定です。
まとめ:データ活用戦略における最適な選択
SAP Business Data CloudとSAP Analytics Cloudは、企業のデータ活用戦略においてそれぞれ重要な役割を担います。
・SAP Business Data Cloud:データ統合とAIを活用し、信頼性の高い基盤を構築。データサイロを解消し、業務全体の最適化を目指す企業に最適
・SAP Analytics Cloud:データ分析と可視化に特化。現状把握や計画立案を強化したい企業に適している
多くの場合、両者を組み合わせることで、データ活用の効果を最大化できます。貴社の目標やデータ活用の成熟度に応じて最適なソリューションを選び、データドリブンな経営を推進してください。
詳細はSAP公式サイトでご確認いただけます。
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