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データドリブン経営の成功へ導く!主要ABIプラットフォーム徹底比較

デジタルトランスフォーメーション(DX)とデータドリブン経営が加速する現代において、データ活用は企業の競争力を左右する最重要課題です。しかし、多くの企業が「データが散在している」「活用人材が不足している」といった課題に直面しています。

ABI(Analytics and Business Intelligence) プラットフォームへの投資は、単なるツールの導入ではなく、データガバナンスの確保、組織全体の生産性向上、そして迅速な意思決定を可能にするための戦略的なインフラ投資です

本記事では、この課題を解決する鍵となる主要なABIプラットフォームについて、その特徴、強みなどを徹底比較します。

 

ABI市場の「リーダー」たちが持つ強力な個性

現代のABI(Analytics and Business Intelligence) プラットフォーム市場は、生成AI(GenAI)による変革の波にあり、自動化された対話型分析が従来のダッシュボード中心の利用を補完、あるいは部分的に置き換えられつつあります。

Gartner社のMagic Quadrantでも「リーダー」に位置づけられる主要なプラットフォームは、それぞれ異なる得意分野と強みを持っています。次からはそれらを中心に記述していきます。

Gartner社のMagic Quadrantとは
Magic Quadrantは、ITアドバイザリー企業であるGartner社が特定のテクノロジー市場を分析し、その市場における主要なベンダーを評価・分類するために作成する市場調査レポートです。ポジショニングにより上から「リーダー」「チャレンジャー」「ビジョナリー」「ニッチ・プレイヤー」に分類され、企業が特定のITソリューションを選定する際、市場全体の状況とベンダーの相対的な位置づけを短時間で理解するための強力なツールとして世界的に利用されています。

 

Power BI (Microsoft):圧倒的な市場支配力とエコシステム統合

概要と強み

Power BIはマイクロソフト社が提供するBIツールで、企業内の膨大なデータを見やすいグラフなどに変換し、ダッシュボード上に表示します。特にExcelを含むMicrosoft 365やMicrosoft Fabricといったエコシステムとの強いつながりと親和性が最大の強みといえます。

・市場優位性:他のABIプラットフォームと比較して、Microsoftのブランド力とOffice 365の親和性から圧倒的な市場での存在感があります。また、OfficeライクなUIから社員が取り組みやすく、外部コンサルタントを見つけやすいなど、導入障壁の低さがあります。
・AI/自動化:ノンプログラミングでデータ処理やAI活用(機械学習モデルの構築など)が可能で、Copilotブランドのインテリジェントなアシスタンスは生産性を向上させると広く認識されています。
・セキュリティ:Azure Active Directory(AAD)やMicrosoft Cloud App Securityポータルと連携し、高度なセキュリティを実現します。

適したユーザー層

既にMicrosoftエコシステム(Office 365, Azureなど)が深く浸透している企業。導入障壁が低く、セキュアで簡単なデータ活用基盤を求める企業。

コストに関する注意点

2025年4月には、Power BI Pro(ユーザー単位)およびPremium Per Userの価格が値上げされました。また、高度な機能がAzureに限定される側面や、ワークロードの分離ができない点が顧客の課題として挙げられています。

 

Tableau (Salesforce):強力な視覚化とコミュニティ

概要と強み

Tableauは、データ収集、分析、加工ができるABIツールで、特に視覚的に分かりやすい点が特徴です。Gartner社のMagic Quadrant™の「リーダー」に合計11回選出されました (2024年2月現在)。

・強力なビジュアル探索:豊富なチャートテンプレートと洗練されたUIを持ち、分析の方法が不明な状態でも、データを入力すれば複数の表やチャートが自動表示され、データを深堀りできます。
・コラボレーション:Tableau Cloudを使用すれば、リアルタイムでの情報共有が可能です。
・エコシステム:強力なユーザーコミュニティ、サービスの専門性、製品の機能性、パフォーマンスが高く評価されています。

適したユーザー層

データの可視化と分析業務の効率化を重視するあらゆる組織。複雑なデータビジュアライゼーションと強力なデータ探索機能を求めるユーザー。

コストに関する注意点

ライセンス費用が高いことが、購買決定の大きな要因となることが指摘されています。

 

Looker (Google):ガバナンスとLookML

概要と強み

Google Cloudで提供されるLookerは、ABIツールにとどまらないデータアプリケーションプラットフォームです。高いカスタマイズ性と厳格なガバナンスが特徴です。

・LookMLによるガバナンス:アナリスト向けの独自言語LookMLを使用し、データソースの集計や計算、関係性を記述することで、データの正確性、一貫性、ガバナンスを保証します。しかしながら、利用者はLookMLの理解が必須となります。
・データアップロード不要:データを保存せず、直接データソースへアクセスしリアルタイムに可視化を行います。データロードの工数が短縮でき、データ散在の問題を回避できます。
・APIファースト:オープンアーキテクチャとAPIファーストのアプローチにより、他のABIプラットフォームやカスタムアプリケーションとの統合を最適化します。

適したユーザー層

データアナリストなどのデータ専門職人材を有する企業。高度なデータガバナンスと一貫したメトリック定義を求める企業。

コストに関する注意点

他のベンダーと比較して価格が相対的に高いことが指摘されています。しかしながら生成AIの料金はユーザーライセンスに統合されているため、生成AIを利用するコストが発生しないという利点があります。

 

ThoughtSpot:AI駆動の「検索ファースト」な分析体験

概要と強み

ThoughtSpotは、AI時代にふさわしい「データを聞くだけで答えてくれる世界」を目指す対話型のABIツールです。自然言語検索を通じて、データ活用のハードルを下げるアプローチが中心です。

・自然言語検索 (NLQ):ユーザーは会話のように質問を入力するだけで、システムが最適なクエリを自動生成します。専門知識のないビジネスユーザーでもスムーズに利用開始できるのが大きな違いです。
・AI駆動の分析:SpotIQという独自AIエンジンが、検索履歴を学習し、潜在的な異常値や隠れた関連性を自動的に提示します。
・セマンティックレイヤー:LookMLに似たセマンティックレイヤーの役割をdbtやMODEとの連携によって担い、コードベースでビジネスロジックの整合性を保ちます。
・セルフサービス:「レポートを待たずに自分でデータを扱える」環境を実現します。

適したユーザー層

現場レベルから経営層まで、SQLや高度な分析スキルがないビジネスユーザーを含む全社員にデータアクセスを開放したい企業。迅速な意思決定とセルフサービス分析を促進したい企業。

コストに関する注意点

Small Companies向けのEssentialsプランは月額1,250ドルからですが、具体的な費用は企業のユーザー数や使用状況に応じて変動するため、メーカーや取り扱い代理店へ問い合わせが必要です。

 

Qlik Sense (Qlik):連想モデルによる多角的なデータ探索

概要と強み

Qlik Senseはインメモリ技術による俊敏な統合型セルフサービスABIツールであり、連想モデル(アソシエイティブモデル)を強みとします。専門知識を持たないビジネスユーザーでも、直感的な操作で簡単にデータを可視化し、多角的な分析を行うことを目的として開発されていることで、利用者を選ばない点もメリットとなります。

・連想モデル:読み込まれたデータ間の関係性を自動でインデックス化し、ユーザーが設定されたパスに制約されずにデータ探索と多角的な分析を可能にします。これにより、部門や部署を超えた関連性のないデータ間でもインサイトを導き出すことができます。
・セルフサービス:ドラッグ&ドロップ操作でデータを可視化でき、直感的なダッシュボードを作成できます。専門的な知識を必要としない幅広いユーザー層での利用が可能です。
・プラットフォーム非依存:主要なクラウドすべてでサービスとして提供されており、マルチクラウド実装を持つ企業にとって信頼できる選択肢となります。

コストに関する注意点

ライセンス体系の複雑性と非ライセンス費用です。利用目的に応じ、閲覧者向けの容量(時間)かユーザー別ライセンスかを選択しないと割高になります。また、オンプレミスではサーバー代、全般的にデータ加工や人件費も考慮が必要です。

適したユーザー層

専門知識のない幅広いユーザー層にデータ活用を広げたい企業。多角的なデータ探索を重視し、データ間の隠れた関係性を発見したいユーザー。

 

「チャレンジャー」「ビジョナリー」で注目されるプラットフォーム

ここでは、「チャレンジャー」「ビジョナリー」などにあげられており、世界で注目されているABIプラットフォームについてまとめました。

SAP Analytics Cloud:連想モデルによる多角的なデータ探索

概要と強み

従来のABIツールがデータの「可視化」に特化していたのに対し、SAP Analytics Cloudは「アナリティクス(分析)」「計画(プランニング)」「予測(プレディクティブ)」の3つの機能を一つのプラットフォームに統合している点が最大の特徴です。
またSAP S/4HANAやSAP BWのデータをコピーせず直接参照できることから SAPを導入している企業でのデータ利活用に適したABIプラットフォームといえます。

・統合型プラットフォーム: データ分析(BI)、予算策定・計画(Planning)、予測分析(Predictive Analytics)を単一のSaaSソリューションとして提供します。
・AI(拡張分析機能)による高度なインサイト:Smart Insightによりグラフの要因・相関を自動提示し、Smart Discoveryでは多角的なデータ探索を支援。さらに予測分析により、統計知識がなくても高精度な将来予測が可能です。これにより、迅速なデータ駆動型意思決定を可能にします。
・SAPシステムとのリアルタイムな連携(ライブ接続):SAP S/4HANAやSAP BWのデータをコピーせず直接参照し、常に最新の基幹業務データで意思決定が可能です。データガバナンスも元のシステムの権限を継承し、セキュリティと整合性を担保します。

適したユーザー層

SAPの基幹システム(S/4HANAなど)を利用しており、BI・計画・予測を統合して効率的に経営管理を行いたい企業。データのリアルタイム性とガバナンスを最重視する企業。

コストに関する注意点

SAP Analytics Cloud(SAC)の料金体系は、主にユーザー単位のサブスクリプション(年間契約)となっており、利用する機能やユーザーの種類によって複数のライセンスプランが用意されています。一部顧客からは、支払いがドルベースになっているため、為替レートの影響でコストが変動することにデメリットを感じています。
 

Domo:オールインワン統合プラットフォーム

Domoは、データ活用に必要なすべてをワンストップで提供するクラウド型ABIプラットフォームです。従来のBIツールとは異なり、データ基盤、分析、アプリ開発機能をオールインワンで提供し、経営層から現場担当者まで、ビジネスユーザーがデータに基づいた迅速な意思決定を行えるよう設計されています。
BIやプログラミングの経験がないビジネスユーザーでも簡単に操作・作成できるノーコード・ローコードツールであり、1,000種類以上のコネクターと数百種類の接続方法を標準搭載。データの集計・可視化だけでなく、チャット機能「バズ」などにより、データに基づいた迅速なアクションとコラボレーションを可能にします。

 

AWS QuickSight:AWSエコシステムと柔軟な価格設定

AWS QuickSightは、AWSのD&A(データ&分析)スタックとシームレスに統合できるABIサービスです。サーバーの構築や管理が不要なサーバーレスアーキテクチャを持ち、高い性能とスケーラビリティを提供します。競争力があり柔軟な価格設定モデルを提供しており、Readerライセンスはユーザーあたり月額3ドルから開始され、Amazon QのQ&A機能も含まれます。

QuickSightは、特にAWS環境を利用している企業や、インフラ管理の手間をかけずにスモールスタートでデータ活用を進めたい企業にとって、非常に有力な選択肢となっています。ただし、AWSクラウドに最適化されているため、オンプレミスとのハイブリッド環境での展開は複雑になる可能性があります。

 

Zoho Analytics:低コストと容易な特定領域の分析

Zoho Analyticsは、企業内に散らばる様々なデータを一元集約し、専門知識がなくても誰でも簡単にデータを可視化・分析できる環境を提供することを目的としています。Zoho製品群との連携はもちろん、幅広い外部データソースに対応している点が特徴です。
また、ライセンス費用が低いことが顧客から挙げられることが多く、中小規模の組織にとって魅力的な選択肢となります。セールス、マーケティング、人事、財務など職種ごとの特定領域に特化した分析アプリを提供しており、BI Fabric機能により、TableauやPower BIなどの他のBIアプリケーションのレポートやダッシュボードを統合するポータルを作成できます。

 

まとめ:最適なツールの選び方

AI駆動の分析、高度な視覚化、深いエコシステム統合など、各プラットフォームは独自の道を歩んでいます。

ツール 主要な強み 適したユーザー/目的
Power BI Microsoftエコシステムとの統合、市場での圧倒的な存在感、CopilotによるAI支援 Microsoft製品を多用する企業、導入障壁を低くしたい企業
Tableau 強力な視覚化とデータ探索能力、大規模なユーザーコミュニティ データビジュアライゼーションを重視し、強力なデータ探索が必要な企業
Looker LookMLによる厳格なデータガバナンスとセマンティックレイヤー データ専門家(アナリスト)が中心のチーム、データの整合性を最重視する企業
Qlik Sense 連想モデルによる自由なデータ探索、セルフサービス分析の促進 広範囲のユーザー層にデータ活用を広げたい企業、多角的な分析を重視する企業
ThoughtSpot 自然言語検索とAI駆動の分析 (SpotIQ) によるセルフサービス化 専門知識のない全社員へのデータアクセス開放、対話型分析の実現
SAP Analytics Cloud SAP ERPとの親和性、データ分析、予算策定・計画、予測分析 SAP ERP導入中で分析・計画・予測を効率的に行いたい企業
Domo ETL/DWH/BIが揃ったオールインワンプラットフォーム、ノーコード/ローコード 迅速な導入を求め、単一プラットフォームでデータ活用を完結させたい企業

BIツールを選ぶ際は、単に機能比較だけでなく、自社の既存の技術スタック(AWS、Google Cloud、Microsoftなど)との親和性、そして最も重要視する機能(例:ガバナンス、AI/NLQ、コスト、ビジュアル表現)を明確にすることが成功への鍵となります。

さいごに

ータドリブン経営システムを支援するのグランバレイは、Power BI, Tableau, Qlik Sense, SAP Analytics Cloud を活用した経営管理システム導入において豊富な実績がございます。経営の可視化や意思決定の迅速化をご検討でしたら、ABIプラットフォームの選定、構築、効果的なレポート作成さらに定着のための社員教育まで、幅広くご支援いたします。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

 

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