SAP BW/4HANA vs SAP Datasphere。なぜ重要なのか?
貴社のデータ活用基盤の未来について、SAPユーザー企業のIT担当者からつぎのような不安を聞くことがあります。
結論から申し上げます。
サポート期限が先だからといって、SAP BW/4HANAに安住している場合ではありません。
SAP社は明確なシグナルを送っています。将来的な開発と革新はSAP Datasphereを含むSAPクラウド製品で行われ、SAP BW/4HANAにおける抜本的なイノベーションは期待すべきではないと…
本記事では、SAPの公式な方向性を整理し、SAP BWを導入する企業が取るべき長期的なデータ戦略の「次の一手」を明確にしていきます。

徹底比較:BW/4HANAとDatasphere、機能と役割の違い
SAPが提供する2つのデータウェアソリューションは、その役割と適用分野が明確に異なります。
| 製品 | SAP BW/4HANA | SAP Datasphere |
| 役割 | 構造化データに特化した伝統的なDWH(データの金庫) | 全データ統合を担うモダンなデータオーケストレーター(データのハブ) |
| 適用分野 | 構造化された企業データに特化した分析、全社的な情報提供 | 構造化・非構造化、SAP・非SAPを含む全データ統合と調和 |
| 強み | 強力なETL機能、安定したレポーティング、長期的な投資安全性の保証(〜2040年) | Business Data Fabricの実現、クラウド環境とのシームレスなデータ連携 |
役割の違いを理解する
SAP BW/4HANAは、SAP ERPなどから集めた構造化データを効率的に処理・分析するための「アプリケーション主導型のデータウェアハウス」です。これまで通り、基幹業務データの分析基盤としての役割は継続します。
SAP Datasphereは、BW/4HANAを含むあらゆるデータソース、システム、クラウドをシームレスに連携・統合するための「データオーケストレーション(調整・統合)ソリューション」です。データランドスケープ全体を管理する、いわば「統合ハブ」としての役割を担います。
現代の複雑なデータランドスケープにおいて、BW/4HANA単独では対応しきれない課題に、Datasphereが包括的なアプローチを提供します。
なぜDatasphereが「本命」なのか?
SAPがDatasphereをデータ戦略の中心に据える理由は、時代の要求に応えるためです。
1) パブリッククラウドへの注力とイノベーションの集中
SAPの戦略的焦点は、Datasphereを含むパブリッククラウド製品にあります。つまり、革新的な新機能や技術開発は、BW/4HANAではなく主にDatasphereで行われることになります。
そのため、最新のデータ活用トレンドに対応するにはDatasphereが最適であるといえるでしょう。
2) データエコシステムの構築
データソースがオンプレミスのSAPシステム内に限定されていた時代は終わりました。SaaS、外部ベンダーのデータ、非構造化データなど、多様なデータを統合し、ビジネスに活用することが必須となっています。
Datasphereは、SAP製品と非SAPクラウド(AWS, Azure, GCPなど)との間に橋渡し役となり、企業全体を横断するデータエコシステムを構築します。
3) Business Data Fabricの実現
Datasphereが目指すのは「Business Data Fabric」という概念です。これは、システムやクラウドをまたいでデータが一貫してアクセス・管理できるアーキテクチャであり、全社横断的なデータのリアルタイムアクセスと活用を実現します。SAP BW単体では実現できない、未来のデータ基盤の形です。
IT担当者が取るべき「次の一手」:共存と移行
では、IT担当者として具体的に何をすべきでしょうか。
「ハイブリッド構成」が一つの選択肢
既存のBW資産をすぐに捨てる必要はありません。むしろ、BW/4HANAの強み(構造化データの安定処理)とDatasphereの強み(データ統合)を組み合わせるハイブリッドアーキテクチャこそが、最も迅速かつ現実的に将来のデータ戦略を実現する道です。
短期的アクション:共存による戦略的利用の開始
BW/4HANAは既存の重要なレポーティング(構造化データの分析)に引き続き利用しつつ、Datasphereを新しいデータソース(非SAPデータやクラウドデータ)との連携ハブとして導入・活用を開始します。
中長期的アクション:「BW Bridge」を活用した段階的移行
SAPは、既存のBW資産をDatasphereへスムーズに移行するための重要なツール「BW Bridge」を提供しています。
BW Bridgeのメリット: 既存のBW/4HANAで開発したデータモデルやロジックを再利用しながら、段階的にDatasphere環境へ移行することが可能です。
目指す姿: BW Bridgeを活用し、最終的にDatasphereをデータ基盤の中心に据えることで、長期的なクラウド統合とイノベーションの恩恵を享受できるデータ基盤を実現します。
まずは始めてみる
SAPの戦略は明確に転換しており、データ戦略の見直しは待ったなしです。
貴社が今すぐ取るべき行動は次の二つがあります。まずははじめてみませんか?
1. アセスメントの実施
既存のBW/4HANA資産のうち、Datasphereへ移行すべきコアな資産、そのまま残すべき資産の棚卸し(アセスメント)を開始してください。
2. PoCの開始
Datasphereの持つデータ統合能力、特にBW Bridgeを活用した既存資産の再利用の可能性について、概念実証(PoC)を開始し、効果を検証してください。
グランバレイは、SAP BW移行支援サービスを提供しております。
データ戦略策定からハイブリッド構成への移行計画策定、技術検証(PoC)、移行に至るまで、一貫した支援サービスを提供しております。
まずは、貴社のデータ活用における課題と、BW資産の状況についてお聞かせください。
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